糖質無くして筋トレ無し?

栄養
RYUKI
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みなさんこんにちは!
ここ数年話題になっている糖質とダイエット、

糖質と筋トレの関係性について

今日はお話ししていこうかと思います。

はじめに

糖質制限,ファスティングなど様々な食事法が巷では話題になっています.
そして,筋トレと食事・栄養は切っても切り離せない関係にあるといっても過言ではありません.

では,筋トレだけでなくそもそも身体を動かす時に食事によって
摂取された栄養がどのように使われているのでしょうか?

本記事では,身体を動かす際にどのようなことが身体の中で起こっているかをまとめていきます.

身体活動に必要なエネルギー源 = ATP

身体を動かすためには筋肉が収縮する必要があります.
筋肉の収縮にはエネルギーが必要となります.

そのエネルギー源となるのが,
ATP;Adenosine Triphosphate(アデノシン三リン酸)と呼ばれる
高エネルギーリン酸化合物と言われています.

アデノシンという物質(ヌクレオチド)にリンが3つ引っ付いてできているものです.
このATP自体にエネルギーは存在しません.
ATPアーゼ(高エネルギーリン酸結合を加水分解する酵素の総称)が
ATPからリン酸を一つ引き離した際に産生されるエネルギーが筋肉の収縮に利用されています.
ちなみに,ATPからリン酸が一つ引き離されると
ADP;Adenosine Diphosphate(アデノシン二リン酸)と呼ばれる物質に変わります.
下に模式図を載せておきます.

エネルギー供給系

前述したエネルギー源となるATPは“ 筋肉1kgあたり約6mmol ”貯蔵されています.
ちょっとイメージが湧きにくいですよね.細かい部分は割愛して,ごく微量
しか貯蔵されていないと思ってください.運動を行っても筋肉は1秒以上
収縮を続けることができないと言われています.
でも,私たちは長時間身体を動かせます.理由はATPが常にADPから再合成されるためです.
そして,このATP再合成の過程がエネルギー供給系と呼ばれています.
エネルギー供給系には,①ATP-PCr系,②解糖系,③酸化系(有酸素系)3つの経路が存在します.

 

①ATP-PCr系

筋肉内にATP以外にPCr;Phosphocreatine(クレアチンリン酸)と呼ばれる
高エネルギーリン酸化合物があります.このPCrがクレアチンと無機リン酸に
分解される時に発生するエネルギーによりATPを再合成します.

長所:瞬時に大きい力を供給できる
短所:7〜8秒程度の短い時間のみの供給となる
※筋肉内に存在するPCrの量は少なく限りがあるため,短時間(運動開始初期)のエネルギー供給となります.

②解糖系

筋肉中にはグリコーゲンやグルコースといった糖が貯蔵されています.それらがいくつかの過程を経て,
ピルビン酸に分解されます.これが“解糖”と呼ばれており,過程の中で得られるエネルギーを利用しATPが再合成されます.

長所:酸素が不足している運動開始時や③有酸素系での供給系を上回る強い運動強度での供給を行う.
短所:30 秒程度の短い時間のみの供給となる.
※①ATP-PCr系と②解糖系はATP合計の過程で酸素を必要としないため,無酸素系とまとめられる.

③酸化系(TCA回路と電子伝達系)

筋肉内のミトコンドリア内でATPが産生される過程です.
遊離脂肪酸(FFA;Free Fatty Acid)や②で産生されたピルビン酸が
ミトコンドリア内でアセチルCoA(活性酢酸)に分解されます.
※遊離脂肪酸はβ酸化を経てアセチルCoAとなる.
アセチルCoAは“TCA(トリコルボン酸)回路(=クエン酸回路)”と
呼ばれる複雑な過程で処理されます.
その際,ATPがわずかに合成されます.
ここで重要なことは,合成される際に二酸化炭素と水素が産生されることです.
二酸化炭素は血中に拡散し肺に運ばれ体外に排出され,水素は“電子伝達系”に送られます.
“電子伝達系”は水素から電子を受け取り,これも複雑な反応の末,
最終的に酸素を還元して水にし,多くのATP(ATP 36分子)が合成されます.

長所:十分な酸素と体内の糖,脂質が存在する限りエネルギーを供給できる.
短所:強い運動強度でのエネルギー供給はできない.

それぞれの特徴を下記にまとめました.

糖が不足している状態で筋トレするとどうなるの?

糖が筋肉を収縮させる時に重要なことはご理解頂けたと思います.

では,糖質制限などで糖を摂取量が不足している状態で筋トレを行うと
どのようなことが起きるのでしょうか?

ずばり,これまでのエネルギー供給の話で考えると,
“筋肉を分解しアミノ酸をエネルギー源と用いられるため,筋トレをしても筋肉量が増えない.”
といったことが起こり得ます.
高負荷(強い運動強度)での筋トレでは基本的に糖が用いられ,また有酸素系で脂肪酸が用いられますが,
脂肪酸の分解には条件があります.
脂肪酸はオキサロ酢酸が豊富にあるときだけアセチルCoAに分解される反応が続くとされており,
さらにはオキサロ酢酸の生成にはピルビン酸の働きが必要です.
脂肪酸の分解には一定水準のグルコース分解が連続的に行わなければならない,
つまり,糖が必要となってくるということになります.
以上より,筋トレに限らず運動には糖質が必要不可欠であることが言えます.

もう2年前になりますが,
超一流の医学雑誌「Lancet」において,
Mahshidら(マックスター大学)が実施した5大陸18カ国で全死亡および心血管疾患への食事の影響を
検証した大規模疫学前向きコホート研究(PURE)が掲載されました.(Mahshid et al. / 2017)
そこでは,糖質の過剰摂取(一食あたり炭水化物6割以上)は死亡率が上昇するため,
過剰摂取を避けるべきとは結論づけています.
しかし,重要なことは摂取を控えることを推奨していない点ではないかと思います.
極端な食事(過度な糖質制限など)は控えバランスの取れた食事(PFCバランスなど)が重要
ということですね.

まとめ

・身体活動に必要なエネルギーはATPである.
・ATPがADPに分解される過程でエネルギー産生が行われる.
・エネルギー供給の経路は3つ存在する.(ATP-PCr系,解糖系,酸化系)
・糖が不足した状態で筋トレを行うと,筋肉を分解しエネルギーを得る.
・糖の過剰摂取が悪いだけであり,筋トレをする際には糖は必要不可欠である.
つまり,糖質無くして筋トレ無し!

引用:
・Mahshid D,et al. : Associations of fats and carbohydrate intake with cardiovascular disease and mortality in 18 countries from five continents (PURE): a prospective cohort study .LANCET . 2017 ; 390 (10107) :2050 – 2062
・石川朗 他 : 理学療法テキスト 内部障害理学療法学循環・代謝 .中山書店 .2010
・吉尾雅春 他 : 標準運動療法学 運動療法学総論 第3版 .医学書院 .2010

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