腕立て伏せに関する論文の
紹介になります。
腕立て伏せを行う上での
ケガ予防のポイントが
理解できると思います。

以前、手幅の違いで腕立て伏せ時に
使われる筋肉が変わることを
紹介しました。
今回、
肩関節の角度の違いが
肩甲骨の動きにどのような
影響を与えるかを調査した
論文がありましたので紹介です。
この論文の内容を知れば、
腕立て伏せ時のケガ予防の
ポイントを把握できるかも
しれません。
Contents
はじめに
皆さん、
腕立て伏せをする際、
脇を大きく開けてませんか?
もしかしたら
その方法で腕立て伏せをしていると
ケガをするかもしれません。
以下、
その理由を示唆できそうな論文です。
論文
題名
Scapular Kinematics and
Shoulder Elevation
in a Traditional Push-Up
概要
腕立て伏せ中の
肩関節角度と肘の位置の違いが
肩甲骨の運動にどのような影響を
与えたかをみています。
肩関節角度と肘の位置の違いは、
脇の開き具合というように言葉を
置き換えられそうで、
①対象ごとの自然な姿勢
②脇を閉じた姿勢
③脇を開けた姿勢
の3条件で
肩甲骨の動き
(後傾、上方回旋、外旋)
を比べています。
対象
16名の健常者
– 男性 10名 / 女性 6名
– 年齢 21.67±2.09歳
– 身長 173.9±11.30cm
– 体重 74.77±20.33kg
なお、
肩関節の可動域(関節の動く範囲)に
問題なく、過去に上肢や脊柱に
ケガをしていない方を対象とした。
方法
手順
ウォーミングアップをした後に
3条件の姿勢で腕立て伏せを実施した。
腕立て伏せ
各条件3回ずつ、
1回あたり4秒間かけ実施した。
(2秒間かけて下げ、
2秒間かけて上げる)
条件間は1分以上の休憩を取り入れた。
姿勢の条件(3つ)
①対象ごとの自然な姿勢
(self-selected position)
②脇を閉じた姿勢
(at side:
the push-up with the shoulder
adducted so that the arm
contacted the side of the body
at the bottom of the ROM)
③脇を開けた姿勢
(elevated:
the shoulder to as close to 90°
as possible during the eccentric
and concentric phases
of the movement)
肩甲骨の運動
・ 後傾(PT;Posterior Tilt)
・ 上方回旋(UR;Upper Rotation)
・ 外旋(ER;External Rotation)
検討
肩甲骨の動き
(後傾、上方回旋、外旋)を
自然な姿勢、
脇を閉じた姿勢、
脇を開けた姿勢の
3条件で比較した。
肘関節屈曲 35〜105°で
データを計測した。
結果
各条件の肩関節の挙上角度
自然な姿勢 53.59±1.59°
脇を閉じた姿勢 35.54±4.86°
脇を開けた姿勢 64.83±0.72°
(肩関節外転角度と同じと解釈)
肩甲骨の動き
後傾
脇を開けた姿勢は他の2条件に
比べて小さかった。
3条件ともに肘が曲がると共に
後傾が小さくなった。
(後傾位の中での変化)
上方回旋
肘がしっかりと曲がっているとき
(肘関節屈曲135〜80°程度まで)は、
脇を開けた姿勢が他の2条件に
比べて大きく、
肘が伸びてくると、脇を閉めた姿勢が
2条件に比べて大きくなった。
脇を開けた姿勢と自然な姿勢では、
肘が曲がると共に上方回旋が大きくなった。
(上方回旋位での変化)
外旋
脇を開けた姿勢は他の2条件に
比べて小さかった。
3条件ともに肘が曲がると共に
外旋が大きくなった。
(内旋位での変化)
注意点
肩甲骨の動きは
実際には胸郭上で生じるため、
後傾や外旋は
実際にはほとんど生じることなく、
下制や内転と呼ばれる動きに
なるのかもしれません。
(同じような表現は一部考察中にあり)
(参考までに私たちの解釈を記載)
前傾 / 後傾 ≒ 挙上 / 下制
内旋 / 外旋 ≒ 外転 / 内転
示唆できること
腕立て伏せを行う際、
脇を開ける(肩関節を挙上させる)と
肩甲骨が
前傾(いわゆる挙上)、
上方回旋するため、
肩峰下インピンジメントと呼ばれる症状を
引き起こす可能性が高まることが考えられます。
肩峰下インピジメントは肩関節の痛みを
引き起こします。
つまり、
脇を開けた状態での腕立て伏せは
ケガにつながる可能性があるため、
控えた方がいいかもしれません。
具体的には、
結果でもお示しした
肩関節挙上(≒外転)角度 60°以上は
ケガのリスクが高まるということに
なるのではないでしょうか?

肩峰下インピンジメントとは,
上肢の挙上に際し
肩峰と烏口肩峰靭帯からなる
Coraco-Acromial arch
(C-A arch)や
肩鎖関節下面などの天蓋と,
腱板や肩峰下滑液包との
衝突(インピンジメント)により
疼痛が生じる病態の総称と
考えられる.
(林典雄ら資料から抜粋)


まとめ
・腕立て伏せ時の
肩関節挙上角度と肘の位置が
肩甲骨の動きにどのように影響を
与えるかを検討した論文を紹介した。
・腕立て伏せ時、脇を開けすぎるとケガを
引き起こす可能性があることが示唆できた。
・よく行われるトレーニングであるため、
ぜひ参考にしていただきたい。
引用:
・Suprak DN et al:Scapular Kinematics
and Shoulder Elevation
in a Traditional Push-Up.
J Athl Train. 2013;48(6): 826–835
・林典雄:関節機能解剖学に基づく
整形外科運動療法ナビゲーション
上肢・体幹. メディカルビュー社
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